「倒れながらにやけてる人なんて、初めて見たよ」
その厭きれたような声に、うっすら目を開けてみる。
すると、ビニール傘で私の身体を雪から守ってくれている始さんが見えた。
「…っ、はじ…」
「あんた、本物の馬鹿だね」
ウソ。どうして、始さんがここに…
「ほらね。俺なんかに付き纏ってると、ロクなことになんないでしょ」
始さん 始さん 始さん 始さん
好き、です。
「わ、わたしっ…、始さんに会う、ためなら……」
「もう良いから。無敵なんでしょ。分かってるから、少し黙んなよ」
ビニール傘が道路に静かに落ちて。
始さんの唇が、私の言葉を塞いだ。
‐END‐