「…ぱい……尚稀先輩っ!!」
「おわっ、びっくりしたー。ん?」
「ん?じゃないーーー!!!!なに、ぼーっとしてんですか!?」
「へ?今、俺ぼーっとしてた?」
そう言って誤魔化したけれど、彼女が納得していないのは一目瞭然だった。
でも、他の女に見とれてました、なんてばか正直に言えねーし。
「まっ、尚稀先輩がぼけーーっとしてるのは、いつもの事ですけどねっ」
茶化してきた彼女に「おいっ」と突っ込みを入れ、頭をわしゃわしゃと撫でた。
ななせは、鋭かったから、たぶん気付いていたはず。
だけど、追求しなかった。
最初から、最後まで、賢くて優しかった、ななせ。
君の優しさに恋をし、君の優しさに甘え、
君の悲鳴に気付かなかった、愚かな俺。
*