美波は屋上に現れると早足で京に近づいていき、そして……


バチンッ


思いっきり平手打ちをした。

「……」

いきなりのことで京は言葉を失う。美波の表情は怒りでいっぱいになっていて、すごい目つきで京を睨んでいた。

ガシッ

美波はたたずむ京の襟首を掴み、大きな声で言い寄ってくる。

「何であんた、加奈のこと捨ててんのよ!!!!」

京はその言葉を聞いて痛む頬から手を離し、襟首を掴む美波の手を振り払って美波に背を向けた。

「答えなさいよ! 京!!」

すると京は軽くため息をつきながら振り返り美波と目を合わせ口を開く。

「俺は別に加奈を捨てた覚えはない」

「じゃあ何で……」

美波の声はかすれている。泣いているのであろう……。

「じゃあ何で加奈をふったのよ……。どうして加奈を泣かせるようなことをしたの?」

「……仕方のないことだ」

「仕方ないって何が? 何で仕方ないのよ!? ……加奈はまだ京のことが……」

「俺も好きだよ。……誰よりも加奈のことを愛している」

「じゃあ……」

「だが俺は加奈と一緒にいることはできない……。これが運命だから……」

京は遠目で街を見ながら言った。