…そりゃ、緊張するよな。


別れを告げられた相手に、誘いの電話をするなんて。


断られるかもしれない恐怖と戦いながらの電話。





…相当、勇気がいると思う。







俺は、申し訳ない気持ちになりながら、できるだけ柔らかい声を出した。



「うん、行くよ。何か買って行った方がいいものある?」



「…ぁ…ううん。そのまま来て…?」



「うん、わかった。じゃあ、明日。お昼前に行くよ」



「うん、待ってるね。良いお年を…」



「良いお年を」







ホントはふたりで紅白見たり、裏番組見ようとしてチャンネル取り合ったり、



ちょっと遠出してカウントダウンの花火を見たりしたかった。





俺のはやとちりのせいで、寂しい年越しになっちゃうな。



ごめんな、美空。








――明日、真実を伝えようか。



美空が勇気を出してくれたように、俺も…頑張らなきゃいけないよな。







俺はその日、カウントダウンなどすっかり忘れて、

戸籍謄本をじっと見つめたまま、一年の締め括りを迎えた。






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