「じゃあ俺バイトだから、夜7時頃には帰るわ」



「うん、気をつけてね。いってらっしゃい」





いつものように、美空は玄関先まで見送りに来てくれ、『いってらっしゃいのちゅー』をしてくれた。



笑顔の美空に手を振り、玄関のドアを閉める。






指先で、唇に触れてみた。





…もう、唇を重ねることもないんだな。






降り続く雪が、俺の髪に落ちては溶けていく。








美空…ごめんな。



あの日、俺が美空に気持ちを伝えなければ。



こんな日が来ることもなかったのに…。









俺はハイネックのセーターの下の、



クロスのネックレスをにぎりしめた。










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