「…なんか、寂しいね」
だんだんと殺風景になっていく部屋を見渡しながら、美空が呟いた。
ふたりで片付け始めた居間は、俺達の好きな本やCD、じーちゃんばーちゃんが俺達に買ってきてくれた旅行のお土産などで溢れていたのに、
今はもう、空の本棚やカラーボックスが佇んでいるだけだった。
「…また、いっぱいにしよーぜ。新しいアパートに。な?」
新しいアパートも、
荷物と思い出で、いっぱいに。
美空の肩が震えてた。
大粒の涙がマスクに染み込んでいく。
「泣くなよ、ねーちゃん…」
俺は、声もあげずにただ静かに涙を流す美空の肩を、そっと抱いた。
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