「ちょっと、海都!サボってないで片付け手伝いなさいよ!」


本棚の奥から出てきた懐かしいマンガを読み耽る俺に、美空の罵声が飛んだ。


「…ねーちゃん、その格好…掃除のおばちゃんみたい」


姉の美空は、バンダナにマスク、割烹着を袖を通し、
両手に軍手、下半身はキタキタになったズボンという臨戦体勢で立っている。




「うるさい!どうせ汚れるからいいの!あんたも早く自分の荷物まとめなさいよ!」




そう言うと、美空はせっせと自分の荷物を段ボールに詰め始めた。



仕方なく、俺も読みかけのマンガを置いて、自分の荷物を片付け出す。




――俺達は今日、住み慣れたこの家から出ていかなくちゃならないんだ…。






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