俺は、今週の『かいとの温もりを忘れる』をマジックで消して、隣にこう書いた。
『あと1ヶ月、忘れないでいて』
テーブルの上に『ごちそうさま』と書き置きをし、トイレに篭ったままの美空に声をかけずに、俺はアパートを後にした。
美空がプレゼントしてくれた、ダウンジャケットとマフラーが温かい。
俺の服の中で揺れるクロスを取り出し、こっそり持ち出した美空の小さなクロスと重ねた。
…美空。
あと1ヶ月、待ってて。
1ヶ月後…泣かせてばかりの美空に、笑顔を取り戻せるように。
頑張るから、待ってて。
俺は、ふたつのクロスを、力いっぱいにぎりしめた。
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