「荒れてるね。なんかあったの?」
希未は100mのタイムを計り終わってすぐ、そう言った。
「タイムはいつもと同じだけど、あんたらしくない泳ぎだったよ?」
「そう、かな?」
「そうよ。何したのか知らんけど、今日はもう止めるか、短めに流すだけにしなよ」
「……じゃ、流してから上がるから、鍵、そこのコンクリートの上に置いといて」
希未は指でOKサインをした。
「じゃぁね」
そして、そう言ってプールサイドを歩いて行った。
私はしばらく水に浸かって、考えていた。
「……荒れてる、かぁ……」
そう呟いてから、私はまた泳ぎ始めた。