「登―! てめぇ、抜け駆けしたなぁっ!」
「先輩が後輩を労わってあげてただけだよっ!」
若本先輩と登先輩のいつもの会話が始まった。
笑いながら希未が、プールサイドを歩いて来た。
「まぁた、やってるね」
登先輩が更衣室に戻りながら、若本先輩と遣り合っているのを見て、希未が言った。
「ったく、もう。みんなの前で、よくやるよね」
私はそう言ってから、鍵を希未に渡す。
「2人共、なんだかんだ言って、マジで美雪に惚れてるのかもよ〜」
「ないない。どう見たって、からかって遊んでるだけでしょ」
「そうかなぁ? ……まぁ、いいや。で、今日はどうする?」
「100、200、1本づつでいいや。その後軽く500m流して上がるから」
「OK」
希未はストップウォッチを持って、私と一緒にスタート地点へと向かった。