学校に行きたくなかったけど、私バカだから授業休むとすぐついていけなくなっちゃうから、行った。
なんだかわけがわかんなくて頭がついていかない。
春くんを好きになっていつも春くんと一緒に行ってた改札。
学校に1人で電車に乗っていくのなんて久しぶり。
なんか変な感じ。
隣に春くんはいない……
前まではこれが普通で当たり前だったのに…。
寂しいなあ。
こんなに簡単に終わっちゃうものなんだね。
学校につくまで春くんを見ることはない……
あたりまえか。
この時間はまだ駅にいるはずだし。昨日までは私が隣にいたけど、今日からはあの子と楽しく話ながらいくんだろう。
必然的に会ってもらってたからもしかしたらもう会えないのかも。
なんだかこの三ヶ月を振り返ったらすごく悲しくなった。
悲しいというより虚しい…
朝わたしが待ってなくて少しは気にしてくれたかな?
昨日のこと謝りもしないでって怒ってるかな?
……春くんが気にするわけないよね。
彼女でいっぱいだろうな…。
同じ年齢だし同じ学校だし、かわいい子だったし……
ちょっと性格怖くて私は苦手だけど。
男の子はああいう守ってあげたくなる子がタイプなんだろうなぁ〜。
私も春くんと同じ年で、学校で出会ってたら何かかわったかなぁ〜…
はぁ〜〜…………。
考えれば考えるほど虚しくなって気付けば学校ついちゃった。
「おっはよ〜…って暗っ。どうやったらそんな変な顔ができるの?」
ひどい顔って…。
親友の柚が後ろからきたと思ったら今さらっとひどいこといわれたよね…。
「柚…おはよ…。」
でも言い返す元気もない。
「で?春となんかあったの?」
えっ?なんで春くんのことってわかったの?!
「優希乃の頭の中は春中心にまわってるからねー」
………。
そ、そうですか…。
「で?何があったの?お姉様に話してごらん!」
お姉様…って。
柚は、ちっちゃい顔に大きな目。すらっとした長い手足。髪は短くてちょっと茶色で、性格はサバサバしてる。身長も164センチあって本当にモデルさんみたい。
一方私なんて……。
身長153センチとやや低め。顔も普通。体型も普通。髪はストレートで真っ黒。特に自慢するところはどこもない。
何をとっても私とは正反対の柚は、やっぱり頼りになるお姉様なのかもしれない…。
「実は…」
私は昨日の夕方から朝のことを柚に話した。
「それはないでしょ!」
話を聞き終えるなり一言そういった。
えー…っと…ない!…っていわれても…。
「優希乃はその彼女みてどう思った?」
ふいに柚がきいてきた。
「えっ?!……。えーっと…お人形さんみたいに可愛かったかな…。…私はちょっと苦手なタイプだったんだけど…男の子からするとあぁいう守ってあげたくなるような子が好きなんだろうなって思った…。」
性格がどうこうというより素直にそう思った。
「ない!」
はぁ?!
「だってあの相澤実依でしょ?守ってあげたくなるなんてない!ない!」
「あの子のこと知ってるの!?」
「うん。何回か啓にも付きまとって家まできた。あの猫かぶり女は中学でも相当男好きで有名になってるみたいよ。」
猫かぶり?!
男好き?!
っていうかそういえば話かけられた時チョー怖かったんですけど…。
「そ、そうなの?!」
「そ。だから安心しな〜。春なら絶対相手にしないタイプでしょ。だいたいあの冷血男がそんな簡単に女に興味なんてもたないって!」
冷血男…って…
柚さん…ひどいよぅ〜…。
「クールで無口だけど……。冷血男じゃないもん…。」
「はいはい〜。まぁいいじゃない。問題解決〜!それよりいつまでそんな変な顔してるの〜?優希乃可愛い顔してるんだからもったいない!笑いなさ〜い!」
変な顔…。
今日はいつも以上に毒舌ですね…。
でもまあ問題解決??
なんだかんだで今日も柚に元気もらってるなぁ。
感謝しないとね。
今日の放課後どうしよ〜…
朝はあの子を彼女だとおもったから、会えなかったけど…。
違う(らしい?)とわかった今、春くんに会いに行っていいものか…。
というか、私春くんに会うの「バカ」って言って帰っちゃった以来じゃん…。
余計気まずいから〜。
でも今日金曜日だから会わないと土日であと二日も会えなくなっちゃう〜〜…。
あぁ〜…。
「行けばいいじゃん?」
「え?」
私声にだしてた?!
「優希乃考えてることわかりやすすぎだから。
会いたいなら行けばいいじゃん。いつも行ってるんだし。優希乃は気にしすぎ〜優希乃のくせに。私は一途に春に突進してる優希乃好きだよ〜。」
「と、突進?!」
驚いて声裏返っちゃった…。
「あれ?違った?」
………。
突進って違くない?!
違わなくもないけど〜…
「まぁ、優希乃は会いたいんだから行けばいいんだよ!考えすぎ〜。案外春も待ってるかもよん!」
そんなに笑顔でいわないでぇ〜。
ってか絶対待ってないと思う…
怒っちゃったし…嫌われたかも。
はぁ〜。
ため息ばっかりでてくる。
「じゃ優希乃、私バイトだから帰る〜!春によろしく〜」
会うかも決めてないのに。
行くだけ…いつも待ち伏せしてるコンビニにいってみようかな…?
謝るくらいはやっぱりしときたいし。
よし!
足取りは重いが、ひとまず向かうことにした。
でも……。
いつものコンビニが見えてきたけど…ありえないくらいドキドキしてるし。
やっぱり行きにくい。
帰ろうかなぁ。
も〜〜う!どうしよぅ〜〜。
あ、あれ?
ふとコンビニの中の雑誌コーナーで立ち読みしてる見覚えのある姿に目がとまる。
ぇえ?春くん?!
このコンビニに寄った所なんて見たことなかった。
どうしているの…?
偶然?それとも…?
変に期待しちゃうよ…。
動けないまま目は春くんからそらせずにずっと見つめたまま。
ふと顔をあげた春くんと視線がぶつかる。
あ…
なんでかわからないけど、咄嗟にコンビニに背をむけ駅の方へ逃げるように走りだした。
駅につくと必死に走りすぎたせいで息が荒く、たっているのも辛い。
やばい…。逃げちゃった…。
「…おまっ…走るのはえーよっ…。」
えっ?!
聞き覚えのある声にゆっくり振りむくと少し息が上がった春くんがいた。
「…っ…な…んで?!」
ただでさえ息が上がって苦しいのに、予想外の春くんの登場で私の心臓はさらにドキドキが激しくなる。
「なんで逃げんの?」
えーっと…私もわかんないだけど…。
「昨日のこと怒ってんの?だから今日の朝もいなかったわけ?」
怒ってないし!朝は…色々あったからで…
でも言葉にならなくて…。怒ってないよって否定したくて…。首を横にひたすらに振った。
「そっか〜。じゃなんで逃げたんだよ?」
「な…んとなく…?」
息が整ってきて答えることができた。
「はぁ?なんとなくであんなに全力で逃げんの?」
眉間に皺を寄せて不機嫌そうにいう。
また怒らせちゃった?!
とりあえず素直に謝ってみる。
「は、はい。す、すみ…ません。」
「っていうか、かなり待ってたんだけど。」
「はい…。」
「なのに逃げられて、追い掛けねーといけねーし。」
「はい…。」
こ、こわいよぅ〜。
相当怒ってる?
っていうかなんで待ってたんだろう…。聞いてもいいかな?また怒らせちゃうかな?
「あ、あの〜春くん?」
「なんだよっ?!」
ひゃっ怖いんですけどー。
「ど…うして…私を…待ってたの…?」
小さい声で聞いてみた。
「おまえ昨日いきなり怒鳴って帰るし。今日は今日で朝も夕方もいねぇーし。怒ってんのかと思って。」
「え…?」
「それにいつもしつこいくらい居んのに、突然いなくなったら何かあったかと思うだろー!」
「心配…してくれたの?」
「わ、わりーかよっ!」
恥ずかしいのかそっぽ向いたけど、ちゃんと私には見えたよ。少し赤い顔。
照れる顔が可愛くて、少しだけ笑ってしまった。
「何笑ってんの?!」
再び不機嫌モードの彼。
ひぇっ!
「す、す、すみませんっ」
すると「帰る…」と小さく呟きくるっと方向転換して改札へ歩きだした。
へぇっ???
「ま、まってよう〜!」
走って春くんの隣に並ぶ。電車がくるまでまだしばらくある。
春くんの左側…やっぱりしばらくは私の居場所にしてていいよね?
…って!大事なこと忘れてた!!
昨日のこと謝ってもないし、朝の彼女?のことも聞けてないし!!
「あのっ春くん!」
いきなり大きい声で言ったからびっくりしたように私を見る。
「昨日は…ごめんねっ!私わがまま言っちゃって…勝手に怒って…怒鳴ってそのまま帰っちゃったし…。本当っごめんっ!」
勢いよく頭を下げた。
「もういいよ。俺も曖昧に行ったのが悪いんだし。…日曜日…」
ん?なかなか言葉の続きがきけず、不思議におもい下げていた顔を上げて、私よりもかなり高い春くんを見上げるように顔を傾ける。
「み、見んなよっ!」
あ…顔真っ赤。
「日曜日…模試じゃなかったからっ…!」
………。
そ、それって?
デートしてもいいってこと?それとも私良い方に解釈してるの?
「ねえ…それって…どういう意味…?」
やっぱり考えてもわからないから聞いてみた。
「だからー!日曜日お前映画行きたいんだろっ!ついてってやるってこと!」
「ほ、ほんとにっ?!後で嘘でしたーは無しだよっ?!」
「わかってるって!だから放せよっ」
あっ…必死になりすぎて…春くんの両腕掴んでた…。
「ご、ごめんっ」
パッと手を放すと急に恥ずかしくなり真っ赤になった顔を隠すように俯くとちょうど電車が入ってきた。
電車に乗り込んでさっきのことを考えてみる。
ついにデートだぁ。春くんをみながらにやける。
「何ニヤニヤしてんの?キモい。」
ええー?!キモいって…
でもそんな言葉じゃ今はへこみません!
「だって嬉しいんだもん!念願のデートだもん!」
3ヶ月も待ったんだもん、テンションも上がるよね?
「はい、はい〜。駅に一時な。」
若干呆れながら待ち合わせ場所と時間を告げる。
「うん!!」
なんか今のカレカノっぽいよね!彼女になったらこんな感じかな?ふふっ〜。また顔がにやけちゃう……………………って、待って!そうだよ!「彼女」のこと聞かなきゃ!
「ねぇ春くん…彼女いる?」
…………沈黙。
そりゃそうだよね。今の流れ的に。
「何、今更。」
ごもっともです。
「いや〜…彼女いたらデートしちゃ不味いかなって…思い…まして…」
なんか聞くの怖くなってきた。
…………。
「っていうか彼女いるかどうかなんて、お前がよく知ってんじゃね?」
「えつ?私?!」
「そ。毎回俺に告白してきてその返事。」
「今は…恋愛に興味が…ない…ってやつ?」
「そ。わかってんじゃん。そんなに俺の意見は日替わりでかわらねーっつーの。」
そうだよね…。柚の言う通りだ。なんかホッとしたような、悲しいような…。
「実…依ちゃんは…?」
聞かずに居られなかった。
「はっ?相澤?」
「今日朝いつもの待ち伏せ場所で会っちゃって…ね、昨日から春は私のだから…って…。」
思い出して悲しくなる。
「っていうか、わけわかんねー。俺あいつのモノになった覚えねーし。昨日告られたけど振ったし。朝もいたけど無視して一人で行ったし。」
そこまできいてようやく安心した…。勘違いでよかった〜。
“次は〜〜〜〜”
聞き終えたところで、ちょうど春くんの降りる駅についた。
いつも一緒に降りて改札でてからお別れをする。
今日ももちろんついて降りた。
改札をでてお別れの時間。あーまだ一緒にいたかったなー。
「じゃね春くん!」
手を振りいつものように見送る…はずだったけど。
春くんはいつもの方向とは反対に歩いてる。
え?そっちは私の家の方なんですけどー??
理解できずに歩く春くんを見たまま。
そこでようやくついてこない私に気付いたのか振り返る。
「帰んないの?」
「か、帰るけどっ!春くんはっ?」
「暗いし送る。」
それだけいうとまた歩きだした。
今日は色々あったから帰るのがいつもより遅く、確かに薄暗くなってきてた。
……けど!まさか春くんか送ってくれるなんて!!
まだ一緒にいたかったから嬉しい!!
そのさりげない優しさにまたキュンときちゃった!
絶対に中学生にはみえないよぅ〜。