「バレンタインの時、創クン…あんたの為に頑張ってチョコ作ってくれたんでしょ！！」



「うっ…うん。」



「だったらホワイトデーにはちゃんとお返ししないとっ！！」



それはわかってるんだけど…



「でもセーラー服は…」



「なに言ってんのよっ！！あんた…料理出来ない創クンにチョコ作らしといて…」



「えっ…別に作らしたワケじゃ…」



「言い訳は聞きたくないっ！！」



って、



「玲夏…あんた呑み過ぎじゃ…」



あたしは興奮して昼ドラの主演女優ばりに声を張る玲夏を見つめながら口元を引きつらせた。



「あんたが呑み無さ過ぎなのよっ！！」



「いや…玲夏、あんた…」



そして苦笑いを浮かべながらさり気なくビールジョッキを奪おうとしたその時、



グイッと、一気にビールを呑みきった玲夏は空になったジョッキをテーブルに叩きつけた。



「菜々美…今からウチ来な。」



「はい？」



「試着すんのよっ！試着っ！！」



しちゃ…く…？



って、



「えぇ～！！そんなの…」



「“えぇ～”じゃないっ！！創クンだって頑張ったんだから…あんただって年に一度くらい根性見せなさいよっ！！」



そして文句を垂れるあたしをピシャリと遮った玲夏は、



「行くよっ！！」



「イヤだよぅ～」



「タダこねないのっ！！ホワイトデー頑張ったら…１５日、ご飯奢ってあげるからっ！！」



「そんなのいらな…」



「なんか言った？」



こ…怖い。



「なんでもありません。」



「よろしい。じゃ、行くよっ！！」



「…はい。」



小さく返事したあたしはズルズルと引きずられながら、玲夏の実家へと向かった。