リンゴとミカンの事情

友達としては、誰にでも気さくに接するが、恋人になりたいと思う男たちには必要以上な拒絶を見せる理由がわからない。

だから告白出来ないでいた。


仕方なしにたまたま告白して来た女子と付き合って見たが長続きするはずもなかった。


どんなに好きだと言われても、ミカンが好きな心は変わらなかった。


それなのに、本能のような情欲は理性を凌駕することが多く、男の弱さを呪ったこともあるが、数が増える度に罪悪感も失せてくる。
「お前、また別れたのか。一ヶ月もったか?」

「三週間。何で知ってんだよ」

「聞こえてくるの?何で別れたの?」


放課後は何故か一緒に帰る時が多い。

部活に無所属なミカンだが、色々な部活に助っ人として呼ばれることが多い。

スポーツ万能なミカンは主戦力として活躍するものだから、正式に部に入って欲しいと請われているのに、断り続けている。

それももう一つのミカンの謎だ。
「性格の不一致」

「離婚の理由かよ」

「部活休めとか平気で言う奴と付き合い続けられるかよ」

「最初から付き合わないと良いのに」

「無下にできるかよ」


ミカンのことが好きだと言えばどんなに楽だろうか。


「オレには関係ないですけどね」


関係なくないと叫びたい気持ちを殺して隣を歩く。


「オレだって気ぃ使ってんだよ。送ってもらうのは有り難いけど、彼女に悪いじゃん」


リンゴに彼女がいるときは極力近づかないようにしているとミカンが言った。


二人の家は近所で、4人兄弟の末っ子一人娘のミカンは蝶よ花よと育てられた。
なのに、こんな口より足が先に出る少女が出来上がってしまった。

けれども、兄達は心配で仕方がないらしく、毎日、送って帰って来いと脅しのような頼みを引き受けてしまった。


「お前も一応女だし。お前のアニキ三人がかりだと怖いし」

「ありがと」


ミカンがそんなことを言うからドキリと胸が鳴った。

ミカンを家まで送り届けると、中からすぐ上の祈初(きうい)さんが出て来た。


「お姫様の護衛ご苦労」

「いえ」


キウイさんは誰よりもミカンを可愛がっている人だ。
「ミカン、今日も楽しかったか?変な男たちにいやらしい目で見られなかったか?」


「大丈夫だよ。オレを好きになる男なんていないから」


ミカンはリンゴにバイバイと手を振って家の中に入って行った。


「また明日も頼むぞ」


キウイはそう言って中に入って行った。


「はいはい」


リンゴは呟くように返事をすると自分の家に帰った。
白い部屋にリンゴはいた。
見たことのない真っ白い部屋だ。

中央にソファがあって、リンゴは座っていた。


「ミカン」


目の前にはミカンが床に座っている。

だが、恰好に息をするのも忘れるほど魅入ってしまった。

制服ははだけ紺色にピンク色のステッチの入った下着がリンゴの目に晒される。

肩紐がズレ下がって大事なところがギリギリ見えそうになっているのが、余計にやらしい。

捲れ上がったスカートの裾からショーツの紐らしきものが見えていて、神秘がそこにあると予感させる。
白い肌がなまめかしく、眩しい。


早く触ってみたいという気持ちを抑えながら、ミカンに何かを指示をする。


ミカンはまるで猫の様に這って近づいてくる。


太股に手を乗せて膝を立たせると、リンゴのシャツをはだけさせて、唇を鎖骨に寄せた。

猫の様に小さい舌が見える。


ミカンが顔をよせる度にリンゴの胸の下の辺りに柔らかいものが当たるのがたまらない。

だが自分からは手はださない。

従順なミカンをもう少し、堪能したい。
ミカンの頬に手を当てて耳に唇を近づけ囁くと、顔を赤くしたミカンは恥ずかしそうに頷いてリンゴの胸に手を這わせながら身体を下げて行く。

指が腹筋をなぞった瞬間、目が覚めた。


「なんつう夢だ…」

夢でミカンにさせようとしていたことを思い出すだけで、申し訳ないような気になる。

けれど

健全な男子が好きな女の子があんな格好で出て来たら喜ばないはずがない。


願望と言えとも、ラッキーだと思った。
「おはようリンゴ」


何の因果が神の嫌がらせかミカンと家の前で鉢合わせしてしまった。


今日、この時だけは会いたくなかった。

あんな夢に勝手に出演させてしまった揚句、自分の欲望のはけにしてしまった罪悪感が拭えない。


「おう」


何事もなかったかのように歩くが、隣を歩くミカンはやっぱり気になる。

実際には制服の中だが、


「なぁ、話し聞いてる?」