駅員さんに聞くところによると、J町とは山奥にある小さな村らしい。


携帯電話の電波もはいらないようなところらしく、町の人たちは全て自給自足で暮らしていると言う。


それを聞いた竜二は、携帯電話でどこかへ電話を掛けていた。恐らく、ライブ関係者のところだろう。


どうせまた時間が戻るのだから、あまり意 味はないと思うのだが……竜二は、そういうところはキッチリしている。


10分ほど待っていると白い車体が黄ばんで卵色になっているバスが到着した。


車内には初老の運転手が一人乗っているだけで、他には誰もいなかった。


「お客さんたち、こんな時期に田舎の町にまで旅行ですかい?」


初老の運転手はあごの下に蓄えている白い髭をワシワシと触りながら言った。


「まぁ、そんなところです。J町まではどのくらいかかりますかね?」


「あんな山の方まで行くのかい?まぁだいたい40分ぐらいで着くと思うけど……年明けは5日にならないとバスが出ないよ?」


健達は愛想よく返事をして一番後ろの座席に座った。


途中のバス停で乗ってくる人もなく、20分程走ると長いトンネルに入った。