29日に教えてもらった曲を思い出して竜二に発表すれば、きっと時間が戻っていることを信じてもらえると思ったからだ。


それから2時間弱、健はギターを弾きながら必死に思い出した。







11時、52分。


ピンポーン


茶色い家のインターホンを鳴らすと、寝癖で爆発した頭の竜二が顔を出した。


「健!遅いやんけー!もうすぐで2時間遅刻やぞ!」


「えっ!遅いって……俺遅れるって電話したで?」


「あっ……そう言えばそんなんあったような……うん……ほな、鍵開いてるから入って!」


健は玄関のドアを開けて中に入った。


やはりカレーの匂いがしている。時間が戻る前の、29日に体験したのと全く同じ風景が広がる。


健は二階の竜二の部屋に入ってカーペットに座りこんだ。