9時53分、健は家を出発した。クリスマス気分が残っているのだろうか、町は朝だというのに賑わっていた。まだ幼稚園か小学生くらいの、可愛らしい小さな子供たちが何やら楽しそうに走り回っている。


商店街を道なりに10分程歩くと、細い路地に入る。この辺りに来ると人通りは少なく、静まり返っている。住宅地から離れて少し歩くと、2階建ての茶色の家に着いた。


ピンポーン、とチャイムを鳴らす。しばらくすると2階の窓から、爆発したのであろうかと思うようなすごい寝癖頭の男がひょこっと顔を出した。


「おぉ健!やっと来たんか!」


「竜二、お前また寝癖かい!」


「そんなん言われたかて朝のセットはめんどいやんけ!今日はお前と会うだけやし。まぁ入ってや!」


竜二(寝癖頭の男)とは中2からの付き合いで、竜二にだけは何でも話し合える仲だ。頭は良いわけではないが、奇跡的に健と同じ大学に合格している。寝癖なのかセットをしているのかわからない爆発頭が特徴的で、とにかくいつも元気だ。