「あのねぇお客さん、まだ発射時刻まで1時間もあるんですよ。無理ですよ、公共の物を私情で使うのは。もう少し待って頂けないですか?」


「1時間……」


「はい。何を落としたんですか?」


「携帯……」


「あと1時間お待ちいただけたら、私がお取り致しましょう」


「あかん!人の命が懸かってんねん!早よ動かせ!」


車掌の肩を揺さぶる手の力が強くなってきた。


「痛っ……いい加減にしてください!警察を呼びますよ!」


そう言って健をホームまで突き放した。健はその場に倒れた。


……なんでやねん!何で俺は寝過ごしたねん!なんで伸也の番号覚えてないねん!


「くそ!伸也!伸也!」


「……健?お前なんでこんなとこで寝転んでんねん」


そこに立っていたのは紛れもなく、伸也だった。


「伸也?!伸也!」