(伸也!うわあああ!)


(お客さん……お客さん……)


「お客さん!」


ハッと目を開けると、車掌が健の肩を揺さぶっていた。


「お客さん、終点ですよ」


「えっ!終点?今何時ですか?!」


「23時30分です」


「?!」


なんてことだ……


「うわぁぁぁ!伸也!伸也どこや!」


そう叫びながら電車を降りた。そこはT駅だった。


「T駅?!伸也がおるかも!」


慌てて携帯を取り出すと、着信が20件以上もあった。もちろん伸也からだ。


「あっ……」


カチャン!


慌てて携帯電話を開くと同時に、携帯電話を線路の溝に落としてしまった。


「くそ!こんなときに……」


健は車掌の元に走って行って、車掌の肩を両手で掴んで激しく揺さぶった。


「すいません!電車動かしてもらえませんか!大事な物が線路の溝に落ちたねん!」