「大きい!あれ見て!」

次々と打ち上げられる花火。どこに目をやればいいのか迷ってしまう。静かな表情で見ている彼に対し、わくわくしてしょうがない私。

「すごーい!あっ、あれすごいかわいい!」

「・・・。」

そんな下手な会話のやり取りのまま、花火大会は幕を閉じた。

「楽しかったですね!花火。」

「そう、よかった。」

「あっ!金魚すくい!」

賑わう露店をところどころ覗きながら、帰路に向かう。人形焼きやはし巻き、定番のたこ焼き、どれもみんなおいしそう。貯金していた少ないお小遣いをどれに使おうか悩んでいると、彼が言った。

「ねぇ、・・・今付き合ってる人とかいるの?」

唐突過ぎるその質問に、私の頭の中が困惑する。何故かわからないけど、群衆の中歩くのを止めてしまった。

「いえ・・・。」

私はそう答えた。

何かを期待している自分と、そのままでいたい自分。私が色々考えていると、また彼が言った。

「じゃあ、気になる人は?」

鼓動が早くなる。

≪これってもしかして・・・。≫

ドラマでよく見る展開を頭の中で再現する。
ボーっと彼の顔を見つめてしまっていた。
すると後ろから来た人にポンと肩があたって、前に押された。

「あっ・・・!」

「・・・。大丈夫?」

押された先は彼の胸の中。
私は恥ずかしくて何も言えず、何も動けずにいた。ただ、私の鼓動はさっきよりも早くなっていた。

半歩後ろに距離をとり、恐る恐る彼の顔を見てみる。彼もまた強張った表情をしていた。