「美味しいでしょ?」

爺さんが煎れてくれたコーヒーは確かに普段ファミレスで飲んでいる物と違う気がした。それは雰囲気も加味されてるのかもしれない。

「ええ、良くこんな所見つけましたね」

爺さんと目線が合った裕は慌てて

「こんな良い所ですよね」

と修正した。納得したのか爺さんはまた奥に座り、読みかけていた新聞に手を伸ばした。佐藤さんは少し笑い

「美味しいけど看板も出さないから気づかれない秘密の場所なの。時々来てるけど誰かを連れて来るのは初めて」
「そうなんですか?」
「狭いしね」

佐藤さんは爺さんに聞こえないぐらいの小声で裕に言った。

「なるほど」
「でも本屋で泉くんを見掛けたら頭の中で此処に連れてきたくなった」
「え!?」
「いつもモッツァに来る時と何か違ってたから」
「そうかな?」
「泉くんの変化はすぐにわかるよ」

佐藤さんは笑いながらコーヒーを飲んだ。背が低いからか長椅子に足が届いてない。本人も背が低い事を気にしていたが今は何だか大きく見える。