海岸通へ続く道を歩きながら裕は老人に言われた言葉を繰り返し呟いていた。

「理解することは厳しいかもしれません。でも、ここまで来たあなた達なら乗り越えることが出来るかも知れません。頑張れというのは簡単ですが厳しい言葉でもあるということを覚えておいてください。」

何を理解することが難しいのだろうか?何を乗り越えねばならないのか?考えれば考えるほど頭の中で絡まった糸のように解くことができない。

「考えてるのか?」

長原が隣を歩きながら裕に言った。きっと長原も考えていたのだろう。裕は長原の意見を聞こうと思った。

「ああ、あれってどういう意味なんだろうな」
「うーん。あの人は何かを知っていることは確かだと思うが今の俺たちじゃわからないかもな」
「とにかく、長野を見つけてみたら何かわかるかもしれないな」
「だと思うけどな」

今はわからないかもしれないが、あの老人が言いたかったことがわかる時がくる。そのときにどう行動したら言いか裕は今は思いつかない。

「見えてきた!!」

先頭を歩いていた土田が裕にまとわりついていた重い雰囲気を打ち消すかのような大きい声で言った。土田の先には立て札が立っており、「この先海岸通」と書かれている。さらにその先には見渡す限りの海が広がっていた。

「いこうぜ泉ちゃん」

土田は走って行った。

「やっぱ土田はこうじゃなくちゃな」

長原も笑いながら土田に続く。ここに長野がいる可能性が高い。裕は少し緊張が高まったが笑顔で走って行った。