裕は昨日光司に言われたことをそのまま長原に伝えた。あれから一睡もできずに朝を迎えた裕は学校についても元気がなかった。放課後2年4組の教室には裕・長原・土田・宮田の4人が残っていた。

「そうか・・・」

長原は裕の報告を聞くと一言だけいい黙ってしまった。その表情は今まで見たことがないほど考え込んでいる顔だった。きっと予想してた以上の返答がきたのでどう答えて言いのかわからないのだろうと裕は思った。

「泉ちゃんどうする?」

土田も険しい表情をしていた。光司が拒否するかもしれないとは思っていたが、『長野も望んでいること』という言葉が気になる。

「私といたときはそんな風には見えなかったし、懐かしそうに話してくれたんだけどなぁ」

宮田も考え込んでしまった。確かに、宮田が言うことが正しいならば中学の長野にはそんな思いはなかっただろう。少なくとも二度と会いたくないなら楽しそうに話すわけがない。となると、宮田と離れてから何か気持ちの変化があって親父さんにも会いたくないと言ったとなれば辻褄が合う。

「キミどうすんの?夢ヶ咲に行っても美樹を見つけること出来ないかもしれないし、見つけても美樹が嫌がるかもしれない」

宮田が裕に言った。確かに、手がかりとなるものはあるが向こうが会いたくないと言われたらどうしていいか裕にはわからない。

「わかってる。わかってるけど、行ってみたいんだ!どんな結果が待ってるか今はわからない。でも…」

「やってみないとわからねぇしな」

長原が続いた。その顔は先ほどまでの顔と違って笑っている。