「好きなやつかぁ」

裕はそう一言つぶやくとあの日のことを思い出した。長野とは俗に言う幼馴染の一人でいつも長原と3人で行動していた。小学校6年のとき初めて長野から手紙をもらった。手紙には一言「好きです」とだけ書かれていた。裕にももちろん好きという感情はあったが、幼馴染として過ごしてきた時間が長かったので素直になれずにいたので、「ありがとう」とだけ伝えてそれっきりにしていた。でも、裕には何の確証もないけど一つの希望があった。それは

「中学生になったら何か変わるかもしれない」

小学生の裕にとって中学生とは別次元の「大人」と思っていた。小学校の告白は好きという伝えたら終わりで何をしていいかわからなかったのである。
中学になっても3人変わらずのままかもしれない。でも、もしかしたら幼馴染から見かたが変わるかもしれない。裕はそう考えていた。
しかし、現実には卒業式の日に担任によって発表された長野の引越し。裕は頭が真っ白になりながら卒業式に参加した。

「手紙書くね」

という長野の言葉が記憶に残っている。中学になって週に一度は長野から手紙が来ていた。しかし、裕は返事を書かなかった。何を書いていいのかわからなかった。いつしかその手紙は月に一度になり半年になりそして、手紙が来なくなった。長原にも返事を書いたらどうだ?と言われた事もあったが結局書かなかった。

「お前はそれでいいのか?」

長原がいつの日か言ったことがあり喧嘩をしたこともある。しばらくして、年賀状なら良いよな。と自分に理由をつけて送ったら送り先が不明で返ってきた。それ以来長野がどうなったのか裕にはわからない。今頃彼氏でもできて充実した日々を過ごしていることだろう。