空から降るは、白いさら雪。
 彼等は、アパートを出て、隣に位置する駐車場で、無限に降り続く雪を見上げている。時折、横の道路を車が通り過ぎていった。
 彼は思う。
 無限であり、また夢幻でもあると。
 特に、目の前で雪と戯れ始めた彼女をみていると、これはゆめまぼろしの類いなのでは、と。
 しかし、それは確かに現実の出来事であった。
 近くに寄り添えば、彼女の息吹を確かに感じることが出来たし、何よりもこの寒さが夢であるはずがない。
「ガーク。来てッ!」
 その言葉に従うように、そっと彼女の傍に寄る。
「えへへー。ホワイトクリスマス。風邪引いてよかったかも!」
「それは言い過ぎだよ、タマ。どれだけ心配したことか……」
「うん! そっかぁ。でも、綺麗……」
 だから、タマの方が綺麗なんだ。
 彼はそう繰り返しながら彼女を一瞥して、思わず息を飲む。
 何故なら、彼女の頭にはうっすらと雪が積もり、それはまるで、雪のヴェールのようで。そして、それを纏った彼女の美しさは、冬のゴッデスそのもの。人工的な街灯と、飽くまで自然な美しさを持つ彼女が、俄かに合わさる。
 気付くと彼は、彼女を後ろから抱きしめていた。
 やはり、何時もの甘いシャンプーの香りがする。