夜のドラッグストア。そこまで客がいるわけではない。
 彼女が自分の寝巻の事を気にしていたので、彼はそう言うと彼女の手を自分の手と重ね合わせる。
 それでいてタクシーで待ってなと言っても付いてくるのだから困ったもの。
 彼等は薬の置いてある場所に向かうと、彼女は朝と昼に飲んだ薬をまたチョイスした。厳密にはアルファベットが名前の横に加わっている。
 そして、次に三割引きと銘打った冷凍食品を買い込む。五目炒飯や、ドリアとかそういったもの。
 流石に彼も昼の惨事を目の当たりにして、作ってやろうなんて感情は微塵も湧いてこなかったのだ。
 最後にスポーツドリンクとクラブソーダを取ってレジに向かうと、ちょっとした事件が起きた。いや、事件というほどのことはない。彼女が財布を忘れてあたふたとしている。
「タマ、僕財布持ってるから大丈夫だよ?」
 彼はそういったのだが、財布を取りに行くとまで言う始末。彼は言った。
「タマ。気にすることはないんだよ? そうだな……。うーん。あ! ちょっと待ってて!」
 彼はそう言うと入口に展開されていた赤い長靴を取ってレジに向かう。長靴にはお菓子が詰め込まれていた。
「……プレゼント。うん、プレゼントだと思ってくれればいいよ。ね?」
 と、言ったは良いが、不意に顔が真っ赤に染まる。
 ……今夜はイブなのに、薬がプレゼント? 馬鹿を言え。初めて買ってあげるものが、こんな下らないものだなんて。気が利いてないにも程がある。
 彼が今からでも、さっきの発言を撤回出来ないかと情けない面持ちで彼女の方を見ると、長靴を彼の手から受け取った彼女はこれまた満天の笑みで言うのだ。
「……うれしい」と。