「……はっ!」
 どうやら眠ってしまっていたらしい。彼は、蒲団に包まってもう一眠りしようとした。しかし、そこで隣の温かな存在に気付かされる。リビングの冷たい床。そこに、穏やかな表情の彼女が隣に寝転がったまま眼をこちらに投げ掛けていたのだ。
 そうだ。そもそも寝た時は蒲団など被っていなかった。
「……タマッ! ど、どうしてッ?」
「……ガクこそ風邪引いちゃうよ? こうすればあったかいでしょ?」
 彼女はかすれた声でそう囁くと、彼の腕に飛び込む。
 温かい。まるで熱があるような……そういえば。
 彼は彼女のおでこに手を当てる。
 ……熱い。尋常ではない。
「タッ、タマ? 大丈夫? 物凄い熱があるよ? あ、薬飲まないと!」
 跳び起きた彼は、薬箱に手を伸ばした。しかし、「ない……」彼は言った。
「まずいな……」
 薬は二回分しか残っていなかった。そして、朝、昼と薬を飲んでしまったのだから、いくらひっくり返そうとも残っている筈もなく。
「……? 大丈夫だよ? ガク。私もうぴんぴんしてるし!」
 彼女は蒲団を蹴っ飛ばすと、反動をつけて起き上がった。だが、
「タマ!」
 ふらふらの千鳥足。彼は彼女を抱き抱えると、「薬を買ってくるよ。待ってて……」と言った。