彼等の共同生活は続いていく。
彼女が「読書の秋よっ! さあ、本屋に行きましょう」と言った為だ。今日は近くにある本屋に行く事になった。もう晩秋も晩秋の事である。
彼等は何時もの様に朝食を食べると、じっくりと出掛ける準備をした。と言っても、彼はただ彼女の化粧が終わるのを待っているだけ。その間彼は、家を出た時に駅の売店で買った小説を読んでいる。読み返すのも三回目となったそれを、ベッドの上でぼぉーっと読んでいると、見兼ねた彼女が口を開いた。
「ねぇーえ。ガァーク。たまには髪の毛でもセットしたら。状の使ってたワックスがあるんだし。セットしなきゃ女の子みたいよ。可愛いからいいけど……くすっ」
「……タマ、誰がこんな髪型にしたと思ってる? タマが『前髪は切るな』って言ったのに真っ直ぐパツンて切るからこんな事になったんだよ? ほんっとこんな事になるんだったら美容院に行くべきだった……」
「あんまり悲観しないのっ! ほらっ! おいで。格好よくしてあげるから!」
「やだよっ! 誰だよ? この前調子に乗ってリボンとか付けてた人は……」
そう。ここに来て、気付けばもう三ヶ月余りの時が流れている。後二日もすれば暦的にも冬。今年の冬は冷え込むらしく、彼はこの前流石にコートを一着買ったのだ。そして、髪も伸びっぱなしだったので、彼女に「この辺で良い美容院はある?」、と聞いた所、現在の有様に至る。彼女の「任せといてっ!」の一言と共に、彼の髪は名実共に抹殺の一途を辿った。
彼は、もう当分の間は返ってこない前髪を無理矢理伸ばしながら、「ワイルド、ワイルド」、と呟いている。
そんな事は露知らず、彼女は化粧も終わり、立ち上がった。もう着替えているそれは、今でもやはり黒であり、彼女の並々ならぬ思いが垣間見えるが、彼は何も言わない。それもまた、何時もの事。
彼女が「読書の秋よっ! さあ、本屋に行きましょう」と言った為だ。今日は近くにある本屋に行く事になった。もう晩秋も晩秋の事である。
彼等は何時もの様に朝食を食べると、じっくりと出掛ける準備をした。と言っても、彼はただ彼女の化粧が終わるのを待っているだけ。その間彼は、家を出た時に駅の売店で買った小説を読んでいる。読み返すのも三回目となったそれを、ベッドの上でぼぉーっと読んでいると、見兼ねた彼女が口を開いた。
「ねぇーえ。ガァーク。たまには髪の毛でもセットしたら。状の使ってたワックスがあるんだし。セットしなきゃ女の子みたいよ。可愛いからいいけど……くすっ」
「……タマ、誰がこんな髪型にしたと思ってる? タマが『前髪は切るな』って言ったのに真っ直ぐパツンて切るからこんな事になったんだよ? ほんっとこんな事になるんだったら美容院に行くべきだった……」
「あんまり悲観しないのっ! ほらっ! おいで。格好よくしてあげるから!」
「やだよっ! 誰だよ? この前調子に乗ってリボンとか付けてた人は……」
そう。ここに来て、気付けばもう三ヶ月余りの時が流れている。後二日もすれば暦的にも冬。今年の冬は冷え込むらしく、彼はこの前流石にコートを一着買ったのだ。そして、髪も伸びっぱなしだったので、彼女に「この辺で良い美容院はある?」、と聞いた所、現在の有様に至る。彼女の「任せといてっ!」の一言と共に、彼の髪は名実共に抹殺の一途を辿った。
彼は、もう当分の間は返ってこない前髪を無理矢理伸ばしながら、「ワイルド、ワイルド」、と呟いている。
そんな事は露知らず、彼女は化粧も終わり、立ち上がった。もう着替えているそれは、今でもやはり黒であり、彼女の並々ならぬ思いが垣間見えるが、彼は何も言わない。それもまた、何時もの事。