真っ直ぐ通りに沿って歩く彼。
 四、五分程歩くと、眼前には、五階建ての映画館。一階はパチンコ屋で、二階から上が映画館というこの珍しい建物は、やはり友人とよく行った場所である。
 上映時間を見ると、一時間少し間が空いていたので、チケット売り場で一枚買った後、この懐かしい街を散策することにしてみる。
 と、意気込んでは見たものの、やること等殆どありはしない。
 彼は、ハンバーガーショップに戻ってシェイクを片手に駅の売店で買った小説でも読もうかと思ったが、結局それも馬鹿馬鹿しくなってやめ、考えた後に辿り着いた答えは、ゲームセンター。
 ……この通りは無駄にゲーセンが有るからな、等と思いつつ、近い店に入り二階に上がると、地元でよくやっていた格闘ゲームの機体があった。
 彼はこれでいいかとばかりにコインを入れると、数多いキャラクターの中から三人を選び、どんどん勝ち進んでいく。
 しかし、ゲームの進行とは逆に、彼の気分は滅入っていった。
 ふと、その理由に思い当たる。
 このゲームは、従来の格闘ゲームでは一人で戦って行くのに対し、三人のキャラクターを選んで使えるというのが売りのゲームだった。
 彼には、特に仲のいい友人が二人居る。いや、厳密に言えば居たというべきか。
 このゲームは百円で三人が遊べたのだ。基本的に、暇な彼と、その友人達。何時も何時も、このゲームで暇つぶしをしていた。
 ゲームを中断した彼は、両手でこめかみ近辺を、渾身の力で押さえつける。つまらない思いなどもう充分だとばかりに。
 画面上には、無抵抗のキャラクター。彼と同様に、少しずつ削られていくゲージ。