彼等は、その丘の周りをぐるりと回る。彼女はその辺に落ちている紅葉やら銀杏やら楓やらを手に掴んでは投げている。あまりに楽しそうなので、彼も少し真似をしてやってみたのだが、何一つ面白くはなかった。考えれば分かるのだ。
 彼女は踊るように歩き、彼はその後を従者のように半歩離れてついていく。
 彼は、ふと気になったので彼女に聞いてみる。
「此処には何年ぶりに来たの?」
 と。彼にとってはふと疑問に思っただけで、別に深い意味はなかった。
 しかし彼女は彼の方をちらっと見ると、憂いを含んだ瞳で笑う。
「うーん……、二年振りくらいかな。此処にはね、弟とよく来ていたの……」
「そうなんだ。弟さんは学生さんかな?」
「ううん……。何て言ったら言いのかな? えへへっ! よく分からないね」
 彼女から自らの家族を話すなんて言う事は、これまで一度もなかった事。
 彼女は何かしらのサインを出している。彼は直感的にそう考えたが、その後の二択に少し迷った。それを聞くか、聞かないか。
 彼がそれに対して考えていると、彼女の方が言葉を続けた。
「ねえガク? 私の事何も知らないよね……。私も怖くて言っていないことがあるの……、聞いてくれる? 少し重いかもしれないけど……。えへっ。ホントはもっと早くに言うつもりだったんだけど、何だかガクが離れていってしまう気がして……」
「……うん。僕で良ければ話を聞くよ。何の力にもなれないかも知れないだろうけど」
 彼は不安そうに話す彼女の目を見てはっきりと言う。
 ……もう後には引けない。
 そう彼は思っていた。