彼等はのんびりと食材を選び、それらの買い物を済ませると、――彼女はハンバーグを作る為に、牛肉と豚肉、そして何故か鶏肉のミンチまで買った。すごいかどうかは別として、ただ事ではない――スーパー内に店舗を出している喫茶店に入っていった。
 彼女が喉が渇いたと騒いだのだ。買い物で買った荷物は彼が担当している。これも居候の大切な仕事なのだ。そういうものなのだ、きっと。
 何はともあれ、彼等はコーヒーを頼み、腰を落ち着かせることに成功した。
 彼はアイスコーヒーを、彼女はキャラメルマキアートを注文する。キャラメルマキアートである。
 ……あ、甘そう……。
 彼は、そんな事を考えつつどっしりと椅子に腰を押し付け、煙草に火を点けてそれを吸った。彼女も思わず声を漏らす。
「ふう…… 落ち着くね!」
「……そうだね。ここは煙草も吸えるみたいだし。たまに喫茶店で煙草が吸えない所があるけど、あれは一体どういう了見なんだろう?」
 彼は、少し顔をしかめながらアイスコーヒーを口に含んだ。砂糖も入れなかったそれは苦かったのだ。
「しかし、日が短くなって来たね」
 彼女は恰好を付けた報いを受けている彼を一目見ると、話を上手く変える。彼女は、もう彼の扱い方を完全にマスターしたらしい。
 ……割に合わないな。
 彼は思うが、無論迎撃出来る武器など何一つ持ち合わせてはいない。