――未来なんて誰にもわからない―― 
 使い古された言葉。
 そして、それを彼は身をもって思い知らされることになるのだが、その言葉の通り、彼にはまだ知る由もない。



 彼は昼間に行ったゲームセンターは避けて、通りの端できらびやかに輝いているそれに向かった。
 丁度映画館とは真逆にあるこのゲームセンターは、大体の店がそうであるように機械音でくまなく満たされていた。少しうるさ過ぎたが、まあいい、このくらいの方が落ち着くかもしれない。
 彼は空いているアーケードの椅子に座ると、周りを見渡してみる。一時期流行っていた音楽ゲームやダンスゲームが所狭しと並んでいた。客は見当たらない。
 彼はそれをしばらく眺めていたが、そのうちそれも飽きて煙草に火を点けて吸う。 そして、今朝の事を思い返して未だ見えぬ何かに思いを巡らせていた。
 ……僕はそれを探しに家を出た。それだけは間違いなく事実だけど、一体それとは何なんだろう……僕は確かにそれを求めている。
 実体のない自分に欠けた心。
 彼はとりあえずそう位置付けてきたが、それだけではない気がする。
 しかし、その先は彼にはどうしても見えなかった。
 ……駄目だ! 頭の中が殺伐とし過ぎてる。そう、何してる……ん、何してる?
「……にしてるの?」
 彼は俯き加減の自分の頭を上げてみる。
「……ふふ、変な顔してる」
 彼には初め、何が起こったのか分からなかったが、やっとの事で話し掛けられていることに気付く。