彼等には彼と違った点がある。
 彼等には人の繋がり、少なくとも帰る家が存在した。そして、彼にそんなものは存在しない。
 まあ彼は進んで放棄したのだが、心中は複雑なものがある。
 目の前を通り行く人々を、空が闇に変わるまで、彼はぼんやりと眺めていた。