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 過去その二
 この前は初めて意味の分からない場所に飛ばされたが、何の事はない。よく見れば隣街だった。しかし、その奇行は日増しに頻度を増やしていってる様に思えた。
 多感な時期に差し掛かっていた彼の心。やはり、それに比例して影を落とすようになっていく。
 彼の幼い知能では、いくら考えても説明のつかない、出口の失われた迷宮であった。
 それは、彼に古代ギリシャのミノタウラスを連想させる。
 親の不始末の為に呪いを掛けられ、迷宮に閉じ込められたミノタウラス。最期には呆気なく殺されてしまう。
 出れるわけもなくさ迷う神話の化け物。彼の姿を思うと、次第に、虚無、厭世、習っても居ない漠然とした思いが、彼を覆うようになっていった。