それと同時に、フミキリがお馴染みの音をたて初める。
少し前の事、長らく音が止むのを待って、その音が止んでフミキリが開いた時、私は幽霊の修司に初めて会った。
だからこの音が止んでフミキリが開いたら、また新たな何かが始まるのだろうかとほんの少し思った。
「もうちょっといたかったな。」
そう言いながら光に照らされて少し笑う修司が、私は凄く綺麗に見えた。
「何言ってんのっ」
私が少し怒ったように言うと、修司は「冗談だよ」と笑う。
これが本当に最後なのかと疑いたくなる。
「修司、バイバイ。」
「あぁ。あ、最後に一言。
お前―――――」
修司が何か言おうとした時、それを電車の音が見事にかき消した。
修司の口が動いているのだけ見えて、その言葉は分からない。
もう一度聞こうとした時には、もう修司はいなかった。