長く綺麗な髪。
大きな瞳。
小さな顔。
痩せた首筋。
風に揺れないワンピース。
白く細い脚。

幽霊とよぶには余りに美しかった。
もしくは、挿絵に描かれたような雪女のような存在をも思わせる。
一つ違うのは、想像上の雪女のような瞳の冷たさは感じられなかった。

どれだけ見つめあったのだろう。
時間の流れが止まってしまったように思えるくらい、感覚なんてなかった。
これは彼女の、幽霊という存在の力なのかと思えてしまう。

やがてその止まった様に思えた時間が流れ出したのは、彼女が微笑んだ瞬間だった。
悲しみを交えていた瞳が、光を見つけたような歓喜の色に変わったのが、手に取るようにはっきりとわかった。
思わず、その笑みに心臓が跳ねたのを感じて息を呑む。

「来てくれたんだ」

昼間の時よりもはっきりとわかる声。
ゆっくりとこちらへ向き合う彼女の髪が、微かに揺れたのがわかった。

なにか話さなければ。
咄嗟にそう思ったが言葉は出ない。
それはこの戸惑いからか、火照った体のせいか。
見つめたまま一度開いた口を結んでしまうと、彼女はなにか悟ったように瞳を曇らせた。