夜が明けても一人。
生きている時も一人のことが多かったけど、当然それとは意味が違う。
私はここにいるけど、存在はしていない。

もどかしい思いが心を詰めた。
息苦しい感覚が襲ってきて、思わず顔をあげる。
無意識に何か救いを探すように。
だけど、何もないのだ。
救いになるものなんて何がある、そう短い間に落胆し、諦めて顔を伏せてしまいそうになったその時、視界の端に人影をみて息をのんだ。

彼だ。
踏切へと続く道のスタート地点で、どうやらここを通るのをためらっているようだ。
踏切が鳴って遮断機がおりても彼は立ち尽くしたまま。
それもそうだろう、私が彼に嫌なものを目の当たりにしてしまったのだから。
けたたましい音を立てて電車がすり抜けでも、昨夜の衝撃は感じない。長い間体を通られると、その間は視界が暗くなった。

ごめんね。

闇に埋もれながら懺悔する。
だけどそんな申し訳ない気持ちとは裏腹に、彼の存在が有り難いとさえ感じているのに気づいた。
あの瞬間、目があったのはきっと間違いじゃない。間違いであってほしくない。
たった一人で無になろうと思った。だけど偶然にも彼が居た。
無になりそこねて本当に一人になった。だけど彼は私に気づいてくれるかもしれないという期待をもたせてくれる。
今の私にとってて、見ず知らずの彼が唯一の希望だった。