少女は空を仰いで、つぶやいた。

「……あたしも、さらってよ……毎日、来てるのに」

確かに、そう言った。

この公園に来ているのは、幽霊にさらってもらうためなのだ、と。


ぼーっと、見上げる。

茜色の空に、雲がうっすら浮いていた。


かー、かー、と、カラスが鳴く。

鳥が列をなして、飛び立っていく。




─夕暮れ時。

黄昏。


今こそ、少女が望んでいる時間帯だ。



うっすら微笑して、叫ぶ。


「あたしを、連れていって。あなたたちの、仲間になる─」




そう、少女は自ら死を選んだ。

五年前の少年のように、消えることを。



辺りは、静まりかえっていた。


勿論、人の姿は無い。






その瞬間─


少女の左足に、激痛が走る。



ぐちゅっと、何かがちぎれる音と、鉄の臭いがした。


「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ」



少女の叫び声が、響き渡る。


血しぶきが上がり、ごとっと、左足が転がり落ちた。

みるみるうちに血だまりが出来、少女の服は朱に染まる。




少女の顔は醜く歪み、余りの激痛に耐え切れず、這いつくばった。

必死に助けを求めようとするが、その声は、届かない。

呻き声は仰ぎ声に、仰ぎ声は虫の息になり、やがて少女の息は、止まった。


充血し、見開いた眼球が、ぽれり、と、落ちる。


みるみるうちに腐敗に、少女の顔み、身体も、総てが、ただの肉片に成り下がった。


内臓は飛び出て、転がっている。






残されたのは、大量の血液と、肉片。そして、内臓。
それらが伸びすぎた雑草にまとわりついている光景は、何とも異様だった。









「ありがとう…身体をくれて。君の命、無駄にはしないからね」


少女の残骸を見て、うれしそうに言う。


その人物こそ、五年前に失踪した少年、その人だった──。