屋敷をあとにする俺の後ろを、ひょこひょことおぼつかない足取りでついてくる少女に、そういえばと思い尋ねた。

「お前、名は?」

少女は一瞬戸惑うかのような表情を見せ、小さな声で言った。

「…ララ」

「ララ?」

「…ララ=エンゼル」


エンゼル…

…“天使”。



「そうか」

「あなたは…?」

少女、いやララが遠慮がちに聞いてきた。

「俺は…」

少しだけ間を置いて答えた。







「カイン、だ」

誰かにこの名を教えるのはいつ以来だろうか。




「カイン…」


呼ばれるのさえ、久しぶりだった気がした。