正吾は洗面所から顔を出して答えた。
「ああそれね、屋台で買ったんだ」
ユカリは眉を寄せて正吾を睨んだ。
「ま~た騙されたんじゃないの?この前は眠ってる間に頭がよくなる機械なんて買ってきて、今度は大丈夫なの?」
正吾は自信なさそうに「まぁ350円だからさ。あんまり期待はしてないけど寒空の中いい歳したオヤジがいくらでもいいから買ってくれっていうんだぜ。可哀想になっちゃってさ」
それを聞いてユカリもさすがに同情したのか「正吾は優しいからね…ま、しょうがないか」と諦め顔だ。
「一体何が入ってるのかしらね~。早速開けてみましょうよ!」
正吾はユカリに急かされながら紙袋を閉じているホチキスの芯をバリバリと外した。
「なあに?これ。」
福袋の中には缶詰が一つ入っていた。
よくあるみかんの絵が書いてあるアレだ。
「どっからどうみてもみかんの缶詰だよな、でもまぁ俺これ結構好きなんだよね。母ちゃん缶切りくれ!部屋で食うから皿もね」
正吾は自分の部屋に入ると、丸い小さなこたつに脚を突っ込んだ。「しかし、しけた福袋だよなぁ。これ一個だけかよ」
正吾は福袋の中をもう一度のぞいてみた。
やはり何も入っていない。
仕方なく正吾は缶切りの