月曜、私は遅れて学校に行った。

「なんで今日遅れて来たの?」

「別に……」




やめてよ。話しかけないで。
私は今祐真の声…聞きたくないんだよ。胸が締め付けられるだけだから。


「別に…って最近繭おかしいぞ?」








………繭………。
名前を呼ばないで。前はそう聞くだけで嬉しかった。だけど今は苦しくなるだけ。


「おかしくなんかない」

「おかしいよ。何かあった?」

「だから何もないって言ってんじゃん」

「何もないわけないだろ。昨日だって泣いてたし」

「関係ないでしょ」

「気になるんだよ…そんなこと言われると」





え……?気になる………?



「担任として出来ることがあるなら俺、するから」



ああ、そういうことか。
先生が生徒心配するの、普通のことだもんね。
別におかしくなんかない関係。
だけど私が望んでるのはそういう関係じゃなくて……それは―――――…















『恋人』



なんだよ。

気付いてる?祐真。貴方が私をそう思っていなかったとしても、少なくとも私はそう思ってたんだよ。




「笹川?」

「あ、祐介」

「どーした?暗い顔して」

「ううん、何もないよ。別に」

「そうか?てか、土曜なんで展示会来なかったんだよ?」

「ごめん。急に用が出来たから」

「あ、ごめん。そーゆーことならしゃーねぇよな」

「祐介、あっち行こ」

「え?あ、いいけど」




もう関わらないのが一番だ。
教室でも話さなければいい。

忘れたい…祐真のこと、どうしても頭から離れないんだ。

どうせ、彼女とかいるだろーし。
あれだけ整った顔してるんだもん、居ないはずがないよ…。


「ちょ…っ!」



私は無視をする。
祐真が私を呼んでる……。


「いいのか?先生、笹川呼んでんじゃん」

「いいの。大丈夫だから」


そう言って私は祐介のシャツの裾を掴んだ。
心なしか祐介の背中が大きく見えた。