義久へ。
 これが届いている頃には、お前達は俺をやっきに探してる頃かもしれん。
 だけどもう探すのは止めろ。無駄だから。
 義久。この前は悪かったな。お前を泣かせるなんて、小学生以来だ。
 覚えてるか。あの時の事を。
 俺の言葉が訛っていた所為で、お前まで除け者になってさ、あの時お前泣きながら言ったよな。ずっと一緒だって。そして、あのボイターズの結成式だよ。今だから、素直に言えるけど、あん時は俺も少し泣いたよ。
 中学生になって、舞花が来て、あの頃は一番楽しかったよな。好き勝手してさ、俺もただ好き勝手に絵を描いて、お前らが、その度に喜んでくれて。マンションでかくれんぼしてさ、いや、お前屋上はきたねえよ。っていうか、屋上なんであの時開いてたんだ?
 舞花は、野球は足が太くなるからやらないなんて言い出した時もあったな。ソフトポーラーはどうするんだっていうあの時の俺の突っ込みは上手かったろ?
 義久。きりがねえんだ。本題に入るよ。俺の事だ。
 何時の頃だったかは忘れたけど、多分高校のころだったと思う。
 舞花から相談を受けて、絵を描いて欲しいと頼まれた。
 写真も見せてもらった。俺は、描いてやるって言った。そして、フランスのパリに行って、本気で勉強しようと思った。あそこは本場だからな。
 けれど、駄目だった。あっちには、それこそ化けもんばっかりだしよ、言葉は通じねえしよ、正直俺は参った。
 向こうでは、この前言ったあの絵ばっかり描いてたよ。講義なんか、すっぽかしてさ。つまんねえんだもん。しょうがねえだろ? けどよ、描けねえんだ。その内によ、フランスに一人で居んのも恐くなってきてさ、もう知ってんだろうけど、やめて帰ってきちった。
 ああ、つれえな。書くのも。初めてお前等の気持ちが分かったような気がするよ。何にしても生み出すのは辛いよ。子供を生むのは女の役目だから、それは助かったかもな。いや、分からん。いや、助かってねえな。