好きだから、別れよう。







…マサキさんのことは、好き。



すごく好き。









だけど……



『そーゆうコト』をするのは、まだ怖い気がする。



もしも…もしも命を授かったら?



私は高校に通っていられなくなる。



退学して、ママになる。








……そこまでの勇気は、まだないんだ…。











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やっぱり、『いつママになっても大丈夫』なときがきてから、そういう関係になりたい。





マサキさんにとっては…それまで待つってことは、つらいことなんだよね、きっと…。





でも、ふたりが…私とマサキさんのふたりともが、新しい命を望んだときじゃなきゃ、いけないと思う。



小さな小さな命を、これからずぅっと守っていける覚悟がなければ。







……私と同じ高校生で、こんな風に考えてる人は少ないのかな。





でも……



マサキさんが好きだから、



これからもずっと一緒にいたいから、



だからこそ、軽く考えたくないんだよ……。









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私はクローゼットから、ブーツカットのデニムを取り出した。



まだまだ暑い日が続くから、涼しげな白のベルトを合わせて。








…土曜日、楽しみだなぁ。



初めて、リカコとマサキさんが対面する。



初めて、



マサキさんを『私の彼氏です』って紹介する。









なんか、ちょっと恥ずかしい…。



でも、なんか……



すごく、幸せ。












その日、私は部屋の電気を消すことすら忘れて、



マサキさんの声がした携帯電話を握りしめて眠った。









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第六章

〜ダブルデート〜



――土曜日。



私はいつもより早く目が覚めた。



デートに着ていく服も、服に合わせた靴も準備できてるのに。



バックの中を覗き込んで、忘れ物がないかもう一度確認した。



財布、ケータイ、ハンカチ、ティッシュ、メイク道具、鏡……





…持ち物は、大丈夫。






あとは、私の心の準備だけ。









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昨日の夜、お仕事を終えたマサキさんから電話があった。





「ついに明日だな〜!アヤの親友に『アヤの彼氏、オッサンじゃん』って言われちゃったらどーしよー…」



だんだんとマサキさんの声が小さくなる。



「大丈夫だよ!マサキさん、かっこいいもん。心配なくらい…」



私の声も、だんだんと小さくなっていく。



「心配?なんで?」



「だって…他の子がマサキさんのこと好きになったらどうしよう、って」



……この不安な気持ちは、どんどん大きくなってきていた。



マサキさんを好きになればなるほど……



こんなに素敵なマサキさんを、他の子も好きになっちゃうんじゃないかって。










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「バカだなぁ、アヤは」



「あーっ、またばかって言った!」



…最近、ばかって言われることが増えた気がする。



「だってさ、よく考えてみ?他の誰が俺を好きになったって、俺はアヤが好きなんだから。

だから、大丈夫。俺たちの関係は永遠に不滅です」



「なにそれ、『永遠に不滅』って」



「長嶋茂雄監督、知らない?」



「えー、わかんない…」



監督はよくわからないけど、マサキさんの言葉には魔法がかかってる。



マサキさんが「大丈夫」って言えば、本当に大丈夫だって気がしてくる。



心があったかくなって、ホッとして……







不思議だよ。



不安で泣きそうだった目が、



いつの間にか笑顔になっているんだから……。








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私は待ち合わせ時間の少し前に、玄関の前の道路に立った。



マサキさんが車で迎えに来てくれるって言ってたんだ。



リカコとシンヤさんとは、ファミレスで現地集合で、

今日はお昼を一緒に食べて少しだべったら現地解散だから、その後どこか出掛けようってマサキさんが言ってくれた。










しばらくすると、マサキさんの白い車が遠くに見えた。





車には詳しくないけど、マサキさんの車だけはわかるようになった。





だんだんと車が近付いてくるのが嬉しいのに、

なんだか目を逸らしちゃう。



ドキドキしてる顔…見られたくないからかもしれない。









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「アヤ、おはよ。お待たせ」



私の目の前に車が止まって、運転席の窓が開いた。



「おはよう、マサキさん。今日はお願いします」



「ははは。乗って乗って」



促されて助手席のドアを開けて車に乗り込むとき、まじまじとマサキさんを見てしまった。



紫と黒のボーダーのシャツに、黒っぽいジーパン。



左腕に、鎖のデザインのブレスレット。






なんか…すごく……



「あ、あんま見ないで。できる限り若作りしてきたんだからっ」



「マサキさん…ヤバいよ!かっこよすぎ…」





マサキさんはずるい。



私には、ミニスカートはいちゃダメって言ったのに。



マサキさんだって、ちょっとカッコ悪い服装で来てくれなきゃ…心配だよ。








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