「君と別れた後の話だが・・・。
彼は仕事でミスばかり犯してね。」

まさか高瀬が?

仕事も遊びもどちらもこなすなんて自負してる高瀬が?


「入社以来初めてだったんで、当時の上司が困惑してね。
君がいるから彼がおかしくなったとか・・・
君を辞めさせろとまで言い出す始末で・・・。」

「私を?ですが・・・。」

別れたのに?

「別れたのに辞めさせるのは無いだろう?
で、当時山本部長が課長だった私に相談に来てね。
彼を転勤させた方が落ち着くんじゃないかって。」

でも・・・転勤なんて無かった・・・。

「彼は急な転勤の話に『だったら辞めます。』と言ったそうだ。」

辞める?

「思ったよ。君と別れたけれど君と離れるのがいやなんだろうって。」

まさか・・・。

「で、今まで山本部長と私で彼の転勤話は全て握りつぶして来た訳だ。
君たちがもしかしたら・・・もしかするかと思ってね。」

「それは無いです。」

「分らんよ。」

意味ありげに加川部長が言った。


あるわけがない。


「彼・・・高瀬さん、結婚しようと思ってる彼女がいるんですよ。」


何とも思ってないように言えた。

今さら部長の話を聞いたからって・・・

何が変わる訳でもない・・・


「そうか・・・残念だな。」


心底残念そうに部長が言うもんだからこっちが悪い気がしてくる。


しょうがない。


高瀬と私は縁が無かったんだから・・・。


そうやて・・・自分に言い聞かせた。