「高瀬、痛いってば、手離して!」


そこは書庫だった。


「おい、そんなに綾花さんが憎いのか?言っただろ、俺と彼女は何もなかったって。」


分かってるよ。

何でそんな顔するの?

さっきとうって変わって悲しそうな顔・・・。


私だって悲しいよ。


視線を床へと落とす。


っと、いきなりぐいっと引き寄せられ・・・



高瀬に抱きしめられていた。


高瀬の匂い・・・懐かしい・・・


胸にうずめた顔をあわてて上げると・・・



高瀬の顔が降りてきた・・・




それは永遠に感じられた――――


このまま時が止まればいいのに・・・


高瀬が唇を離してもまだ私はボーッとしていた。


何が起こったんだろう。


高瀬の腕の中、ふとあるものに気づいた。


ポケットの中の・・・小箱・・・。


ハッとしてその腕から離れた。



「信じられない。結婚したいと思ってる彼女がいるのに・・・。」



とっさに出た言葉がそれだった。


そんな私に・・・高瀬は


「男は心と体は別なんでね。」


そう言い放って出ていってしまった。