まだ、高瀬と会う心の準備ができていないから私はひどく慌てて・・・


「あ、ああ、高瀬いたの。」


「ああ、お前と一色が入って行ったのが見えたから・・・ここで待ってた。」


ここで?

書庫の前で?


書庫の中の話声はここでは聞こえない。


でも・・・


「まさかお前が一色の・・・。」


「ち、ちがう。」


「そういう訳か。綾花さんに対する復讐のつもりか?」


「だから、ちがうんだっ・・・」


「何がちがうんだ!」


高瀬が怒鳴る。


ものすごく怒って・・・る。



ここは冷静に、冷静にと思えば思うほど・・・


次の言葉が出なかった。


「自分が何してるのか分かってるのか?」


何もしてないよ。


ただちょっとおせっかいに・・・


不倫調査・・・してただけ・・・



「お前がそこまで・・・。」


そこまでなによ?


高瀬は完全に私を疑ってる。

疑うというよりもすでに私は黒なのだ。



涙がこぼれた。


きっと、何を言っても信じないだろう。


「私、仕事あるから・・・。」


高瀬から逃げる。


「待てよ。」

腕を掴まれた。


「離してよ!セクハラよ!」


「はあ?セクハラ?お前の方がよっぽど・・・。」


本当はそこでちゃんと誤解を解くことに専念すべきだった。


でも、あまりのショックに・・・


ただ逃げだしたのだった。


「言いたければ言えばいいでしょ。みんなにバラしていいわよ。

一色さんが迷惑するけど。」


余計なこと口走って・・・。