ゆっくりお風呂も入らせてくれないわね、全く!

タンクトップの上に軍のパイロットスーツを着ながら、私は自室を駆け出した。

廊下の途中で、AMハンガーに向かう真紅郎と鉢合わせる。

「育ちのいい胸の自慢か?さっさとその脂肪をしまえ」

「軍にもセクハラはあるのね!後で宗方艦長に言いつけてやるから!」

思いっきり舌を出しながら、私は真紅郎を置き去りにAMハンガーへと急ぐ。

…ハンガーは慌しく動き回るメカニック達。

オイルと汗の匂いが充満している。

「お嬢ちゃん!」

メカニックの一人、マーク・マッカートニー曹長が叫ぶ。

「お前さんの機体はこのMk―Ⅱだ!塗装し立てだから傷つけんなよ!」

元は真紅郎の愛機だった、高性能AMソルジャーMk―Ⅱ。

大気圏内では勿論、宇宙空間でもその高速機動性能は折り紙つきだ。

恐らくは真紅郎の注文なのだろう、機体色も私のパーソナルカラーであるプラチナシルバーに塗り替えられていた。