学校の授業はとりあえず先生の話を聞き流してれば終わる。敏男は早く部活に行きたくて仕方がないのだが、こういう時に限って先生の話は授業とは関係のない方へ逸れて、しかも先生一人が盛り上がって、時間が押したりする。

「先生が子供の頃、砂場で泥遊びをした時に、こう…小刻みに泥の山を叩くと、表面に水が滲み出てくるのが不思議でね。しつこくそんな遊びをしたものでしたが、あれが液状化現象だったワケですよ」

そんな事はどうでも良い。既にチャイムは鳴って、担任が廊下で待っているのだ。

「あ、時間が押しちゃいましたね。じゃあ今日はここまで」
先生がそう言い終わるのが早いか、日直が号令をかけた。


 部員達が練習を始めると、みづきは先輩マネージャーと一緒に仕事に取りかかる。

 マネージャーは、タオルやドリンクの用意、ユニフォームの洗濯やら、スコアの記入やら、他にも外周があれば自転車で伴走もする。和也達が練習でヘトヘトになるのと同じ様に、みづきもヘトヘトになるまで走り回るのだ。

「どう?長谷川さん。マネージャーの仕事は」
先輩マネージャーである秋山カオルは、緩くクセのある髪をゴムで結び直すと、みづきを振り返って言った。