「大丈夫大丈夫!複雑骨折くらいですんだし!
うん。怪我ですんでよかった」
「そうじゃなくて。大丈夫なの?」
無理矢理笑う田中を見て
もう一度尋ねると
田中の目には一気に涙が溜まった
「・・・うぅ・・・。悔しい。なんであたしなの?
あんなに、あんなに
頑張ってきたのに
何もかも犠牲にして
部活だけ頑張ってきたのに」
そう布団を強く握りながら涙を流した
俺は何もいえなくて
情けない
美海をおいてまで
ここにきたのに
何一つ言葉を掛けることができない
だから
そっと手を伸ばしたんだ
今は弱々しい田中空の小さな手に
そっと田中空の手に触れたとき、パチンッと振り払われる
「だめだよ。こういうときにだけ優しくしないで。ずるいよ。
美海ちゃん、かわいそうだよ」
そう言った田中空の目はなんとも言えない悲しさだった
「ごめん。そうだよな。
俺もいい加減大人にならねえとな
じゃなきゃ、お前にも迷惑かけるし美海にも嫌われちまうし」
頭をくしゃっと掴んで
田中空から目を反らす
「そうよ、隼人くんはあたしの心配なんかよりまずさきに自分の心配しなさい」
涙をふきながら
そう微笑む田中空
「あぁ、でもよ、あいつ最近すぐ変なこと言い出すんだよな。
お前が俺を好きって
おかしいだろ?」
面白おかしくいってみたけどすぐに田中空は笑いもせずに窓の外へと目をずらす
そしてそっと呟いたんだ
「それ、ほんとだよ」