そこに立っていたのはタカオたちじゃなかった。
スラッと身長が高く、黒のスーツを着た男の人だった。でも、あたしを見る目はとても冷たく、表情なんてなかった。
「誰…ですか?」
「雅いるか?」
龍平よりも更に低く、それもまた冷たい声だった。
「出掛けてますけど」
そう言うと男はチッと舌打ちをし、あたしに構わず中に入って来た。
「あの…ッ」
この人誰…?
リビングに入り、真っ白のソファーへ座るとタバコに火をつけた。
「待たせてもらう」
んー、って言っても雅たちは最近本当に遅いからなぁ…
「最近帰り遅いんで、何だったら連絡した方がいいと思うんですけど…」
あたしは未だにリビングのドアのところに立ったまま、男の頭を見下ろしていた。
あたしは雅たちの電話番号を知らない。
「あ?」