奇妙な感覚に捕らわれた。目の前では何千人もの人間が渦巻いているにも関わらず、何の障害もなしに佐伯のところまで歩いて行く事ができた。そう、まるで乱舞龍の奴らが俺が通る際に道を開けるように、俺が通るところには何もなかった。


「狂犬も大した事ねぇな」


自分のチームを、自分で卑下するお前の気持ちは、残念ながら理解できねぇ。しかも口角を上げ、いかにも楽しそうに。


「お前とやり合うつもりはねぇよ」


佐伯の顔から笑いが消えていた。


「……」


俺はそんなお前をどんな目で、どんな気持ちで見たらいい。